古今東西音楽館増築部

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Whiskey In The Jar
whiskey in the jar<これはシングル盤
by Metallica from the album "Garage Inc."1998

自分の好きな歌をちょっくら日本語で楽しんでみるコーナー。"Whiskey In The Jar"です。アイルランドのパブ・バラッドのくせにちょっと変わった筋にも名の知れている歌なんですよ。

 昨今のアイリッシュ音楽好きの増え方を見ても,楽器演奏・ダンスまでは来ても歌を歌おうなんて人はまだまだ少なくて。髪の長い麗しい女性がハープを弾きながら美しい声で歌うのを聞いてこの道に分け入った者としては,少しばかり淋しい。ましてや酒場で酔っ払いががなりたてて歌うパブソングの類を一緒に歌おうなんて酔狂な奴もいない。そもそも現地では誰でもが知っている歌がわざわざCDなんぞになることは決してないので,誰も知らず当然話が通じない。それがこの曲はヘビメタ好きの間でけっこう知名度が高い。あああの曲ねと話が展開する。なんでだ?(笑)

 最近70年代ロックの掲示板なんかで,テイスト(Taste)やシン・リジー(Thin Lizzy)がブリティッシュ・ロックじゃない(厳密には)などとしたり顔で書き込んでいる若造がおるのですが,何が(厳密には)だい。当時はみんなブリティッシュ・ロックだったのさ。あ,ご存知ない方の為に書いておきますと,どちらもアイルランドの出身ということなのですが。

 そのシン・リジー,まだ人気を得る前の1972年に出したシングルが英国でえらくヒットしています。それがこの"Whiskey ..."なんですが,日本で出てたのかな。アルバムは聞いてたんですが記憶にございません。CDの時代になって「おや,こんなことやってたのか」と微笑ましくベスト盤など聞いて知ったのです。もともと綺麗なメロディの多かったバンド,ギターのフレーズなどに今だからこそ分かるそこはかとないアイリッシュ風味が乙ですな。余興で出してみた曲が思わぬヒット。それで順風を受けて満帆になったという気がいたします。
 テンポを落し8ビートに乗せて印象的なギターのリフを付けて一丁上がり。小気味の良い演奏と歌です。多くのロック小僧に影響を与えていたシン・リジーですが,それをメタリカがカヴァーしてたってのが楽しくて,今回取り上げてみることにしました。

♪びんにはいったうぃすきー

名高いケリーの山を越えていた時のこと
ファレル様が儲けの御勘定の真っ最中
俺はピストル構え刀を抜いてこう言ったのさ
立ち上がって差し出しな この不敵な詐欺師様に

まっしゃりんだまどぅーだまだー
わっくふぉーざだでぃーおー
わっくふぉーざだでぃーおー
びんにはいったうぃすきー

数えてみるとかなりの大金
ポケットに詰め込んでジェニーの待つ家へ
ジェニーは誓ったものさ 俺を決して裏切らないと
けどよ女の言うことは当てにならねえ よく魔がさすしな

俺は部屋でひと眠り 安心し切ってお宝の夢
だがよジェニーの奴 俺の鉄砲玉に水を詰め
そしてファレル様をお呼びだ 虐殺の準備完了と来た

旅支度が整った早朝に ファレル様と手下共に囲まれた
俺はピストルを構えた 刀はジェニーが持ち逃げさ
だがよそれは水鉄砲 おかげで俺は捕らわれの身

助けてくれる奴がいるとしたら 戦友の相棒さ
もしコークかキラニーの奴の居所が分かったら
もし奴が助けに来てくれたなら
一緒にキルケニーをうろつこうぜ

誓って言うが 奴の方がカワイイ売女のジェニーよりずっとマシってもんさ


 これは後半がはしょられた短いバージョン。長いものを聞くと,捕まった後牢屋に入れられて脱獄しちゃったりもするんですが,その方が一人で山をさ迷いながら戦友の顔を思い浮かべてぼやいてる感じが出ていいですな。それにしても西部劇のチンピラ物語が思い浮かぶような歌です。キャプテン・ファレル氏とは誰で,どーして山の中で金勘定してなきゃならないのか今もって不可解な部分の多い歌です。あと,謎かけみたいな言葉遊びみたいな教訓みたいな連が最後にくっついていたりするバアージョンも見かけてはいるんですが,くどくなるのでこの辺で。
| gingerpop | folk music | 00:00 | comments(1) | trackbacks(0) |
ノルウェーのサンプラー(4)
北欧の音楽北欧の音楽〜白夜の調べ
キング KICC-5023(2000)

 しつこくノルウェーのサンプラー散策の4枚目。今回はれっきとした「世界各地の空気を音によって触れたい人に最適の一枚」という宣伝文句の“初めて聞く民族音楽”なるシリーズの第2弾…なのですが,何故かサンプラーとしても中途半端な。果たしてそのココロは?

 さあて。まず「北欧の」と謳ってる割にはブックレットのデザインがフィヨルドに重ねて散りばめられた“NORWAY”の文字。見た目からして何かヘンです。編集意図がどうも分からない。そもそもキングは「世界民族音楽集成」など一流のライブラリーを抱えている一方で,ルーツ・ポップス的な音楽を集めた“入門用「民族」音楽”も出しているのですが,首を傾げる物があります。

 例えば第1シリーズの『魂の響き〜ケルトの音楽』は17分の16がアイルランドとスコットランドの曲で,プロの若いミュージシャンが発表していた「作品」を集めているのにブックレットの写真は田舎の老人きりなのですね。一体何処が“ケルト”じゃ何が“魂”じゃボケェ。などと思ったものです。本のカバーの掛け違いに出会ったみたいな印象です。 そう言えばこの「北欧…」も17曲。悪い予感がしてきますね。(笑) 「17曲入り」に注意せよ…って,他のCDのことは知りませんけど。(@_@)

 案の定17曲中12曲がノルウェー。4曲がノルウェー国内のサーミ(スカンジナビア,ロシアに住む先住民族)のヨイク。1曲がスウェーデンでした。おかき詰め合わせの袋を破ったら海苔と胡麻しか入ってなかったみたいな。(⌒‐⌒) 
 普通さ,北欧と言えばノルウェー,スウェーデン,フィンランド,デンマークにロシア北西部も入れたいよなあ。
 で,仮りにタイトルが『ノルウェーの音楽』だったとしても,『魂の…』もそうなんですが,まだサンプラーとしても認める訳にはいきません。1曲目が Tone さん(またしても!)であっても。2曲目がアンビョルグちゃんであっても(笑)。4〜5曲目に前回触れた Bukkene Bruse がきちんと入っていても! 選曲も割りと良く,地域的にも西部,南部,北部,中東部のものがきちんと解説付きで聞けるのはありがたいとしても。何故なら録音年代が70年代のものから90年代のものまで幅がありすぎるのに,そんな断りやデータがどこにも書いてない。入門用と言いながらこれではね。編集意図や選曲の方針が見えないと言ったのはそういうことで。

 ヨイクは他の音楽と全く異質な声による自然との交感。打ち込みを使ったアンビエントなもの,ハードロック的なもの,伝統的なもの男女,それぞれ4曲が…過去と現在の対比がきちんと分かるように連続して聞けるようになっています。でも置いてある場所は少しおかしいと思うぞ。担当者さま。ここでもおざなりで適当な印象をまたしても持ってしまいましたよ。

 唯一の救いは各曲の解説がきちんとしてること。短い字数の中でよく書けたなあと好感度プラス。よく分かってる解説者だ。渡辺芳子氏。でも,短過ぎる解説にヴァイキングやカレリア(フィンランド・ロシア国境)地方のことまで触れてあるのは痛し痒しですなあ。もっと枚数をあげたら良いのに…>キングの担当者。大局的に見るとそれが将来の商売に結びつくと思うんだけどなあ。。

 最後に北欧音楽のファンとして。ブリテン諸島,中・東欧諸国,ジプシー関連,などの良アンソロジーのごとき,バルト3国・ロシアも含めた大アンソロジーがあればいいなあと思います。と書いて今回の連続ものに終止符を打ちましょう。
| gingerpop | folk music | 20:10 | comments(0) | trackbacks(1) |
ノルウェーのサンプラー(3)
folknettnorwayfolknettnorway
FONO FNCD-1(1999)

 さて,ノルウェーのサンプラー散策も3枚目。本国からの1枚。編集されたのが1999年ということですが新録音でなく,大御所・中堅が90年代に発表した作品が多く収録されています。<ちなみに Tone さんも目出度く99年モノが1曲。(⌒‐⌒)v

 ノルウェーの文化活動審議会(?)のサポートで音楽家や録音活動の基金になる CD のようで解説は英語。ターゲットは全世界? 国が絡むとお堅い雰囲気になると思うのはどうやら日本人の先入観で,ジャズもポップスもクラシックもフォークも国=国民の財産としている国もたくさんあるんですよね。そして,ここでもワールドミュージックの流行以前からの変わらない伝統音楽をベースにした様々な表現が聴けるわけです。

 トップはハルディンフェレ(ノルウェー独自のバイオリンでドローン弦を含めると8本以上(?)の弦。<調弦が大変そう。英語名ハルダンゲル・フィドル,ハルダンゲルング・バイオリン<日本では唯一山瀬理桜さんが有名?)の凛として一歩くぐると温かい響き。この国の女声もそうだな。続けてECMの作品もあるベーシストが口琴とトーキングドラムぽい太鼓フィーチャーして贈るほのぼのした小品。さらに続けて美しい女声とヨイクを並べ,ピエール・ベンスーザンばりの生ギターで奏でられる曲を聞けば,これだけでも北欧のイメージはがらりと一変するでしょう。後半に行けば行ったで,例えればおどろおどろしい混沌から突きぬけて来る月光のような(貧弱な語彙でスマソ)音楽が聞こえて来ます。合唱しかり打楽器群しかり,口琴までも同様に使われてますが,この2面性を面白く感じられれば北欧のトラッドへの扉は広く開かれたことになります。そして随所で聞かれるフェレの音にうっとりして下さい。

 ライナーのメッセージにも,ノルウェー独自のレコード会社で作られてきたプロフェッショナルな民俗音楽の生命力と本質(ノルウェー人とサーミの)を見せたいとあります。民俗音楽が「発展を続ける」ものだと明確に伝えたいというニュアンスからも,非常に進歩的な国であることが伺えますな。

 大好きなフィドラーの一人アンビョルグ(Annbjorg Lien)ちゃん。デビュー当時,ソロ作品をがちがちの伝統主義者から批判されて活動の場を失いそうになった彼女も,活動を半分ずつにして今ではその伝統主義者も大満足の第一人者…彼女が参加するオーセンティックな方のグループ,ブッケネ・ブルーセ(Bukkene Bruse)も収録。とは言え,ここで収録されているフォークというよりはまるでプログレのような豪快なインストが最終曲であるのも象徴的かな。

 p.s.
 解説は曲が収録されているCDのデータのみというのはいかがなものか。それも曲順を間違って記してあるのは購買者をなめているとしか思えないぞ。(怒) 気に入った曲があってCDを注文したら違ったものが来るなんてサンプラーとしては失格ではないか。担当者を呼び出して小一時間問い詰・・・めdf;lgkじゃ;sdlfk。http://www.fono.no/folknettnorway/
| gingerpop | folk music | 08:53 | comments(3) | trackbacks(0) |
ノルウェーのサンプラー(2)
Chants Et Danses De NorvegeChants Et Danses De Norvege
Playa Sound PS-65065(1990)

 いろんなジャンルの民俗音楽を廉価で出してくれてる有難いフランスの Playa Sound レーベルのものです。前の New Albion 盤とほぼ同じ作りで,Heilo の録音を新旧取り混ぜての28曲。選ばれている主要音楽家はほぼどちらも同じなのに,全く重なった曲がないのはフランス人とアメリカ人の好みの違いというものを表していると思いませんか。思いませんか。そうですか。

 ノルウェイ〜北欧の音楽へ誘ってくれた一人 Tone Hulbaekmo さんが11曲も入っていたので喜んで買ってしまったものですが,彼女自身のオリジナル盤がきちんと手に入った今となってはダブってる分が多いという情けない話です。まあバラエティに富んでいてあきませんし,曲毎の解説もちゃんと英語で書いてあるので為にもなります。

 真面目な方ならノルウェー語の辞書など買ってタイトルの意味を調べてみようと思われるのでしょうが,たまたま手元にあったスカンジナビア航空のパンフにスウェーデン語との対比で会話がいくつか書かれていたので,それで良しとしているテキトーな人間には  Vals=ワルツ,Polkett=ポルカ,Masurka=マズルカなどの単語が分かるのはホントに喜ばしいことです。

 こうして2枚のサンプラーを聞いて来てふと思うのは,「癒し」で売ればけっこう売れただろうになあと。増築部ではわざと「民俗音楽」という言葉を使っているけれど,日本ではアジア・アフリカや未開種族の“非西洋的”音楽のイメージが強いものなあ。北欧独特の味は言葉で説明するのがとても難しいので尚更。という訳でノルウェーのサンプラーはまだまだ続くのです。
| gingerpop | folk music | 15:34 | comments(1) | trackbacks(0) |
ノルウェーのサンプラー(1)
Nordisk SangNordisk Sang / Music of Norway
New Albion NA-031(1991)

 ノルウェーの音楽の魅力に触れたのはいつ頃だったか。NHK-FMの民族音楽番組だったのは間違いない。バイオリンなのにそうじゃないような音色のバイオリン。夢の中で出会う森のお姫様的な魅惑的な声。素朴だけれど息をするような異国的旋律の笛。
 とにかく興味は持ったもののレコードが全く手に入らなかった時期は長かった。そんな時に出会った天恵がこれ。少なくとも当時はアメリカ盤で手に入る唯一のノルウェー音楽のCDではなかったでしょうか。と言うより,自国以外の音楽にほとんど興味を示さないアメリカ人が,こんな素敵なコンピレを出していたことに本当に驚きました。

 ノルウェーの民俗音楽の活動をレコードを通してしっかりと支えて来たヘイロ(Heilo)・レーベルの音源を,主に1977〜1988のものから19曲。
 伝統音楽の継承が途切れた事はない(と何処かで読んだ)ノルウェーですが,録音を追う限り確かに世代間の断絶がなく,複世代間での録音が目立ちます。とすれば,プロフェッショナルな民俗音楽家が誕生して権威を持っているのか,ポップスやクラシックとの境界がどれほどはっきりしたものなのか気になって来ます。

 意外にも合奏は少なく演奏も歌もソロです。白眉なのは弦と歌。英語でハルダンゲル・フィドル(hardanger fiddle)と呼ばれる独特な形と音色のバイオリン,ハルディンフェレ(hardingfele)の名手ハンス・ブリミ(Hans Brimi)ら1910年代生まれの巨匠の録音が聞ける。
 歌姫はペルニル・アンケル(Pernille Anker),シャーステン・ブローテン・ベルグ(Kirsten Braten Berg)のちょっと世代がすれる極上のお二人。アメリカ人にマジカルな魅力を伝えたことでしょう。ここ数年,北欧の民俗音楽のリリースが増えているのですが,かつてのケルト・ブームの再来(とまでは行かずとも)のように,美しい女性の歌声のリリースから始まっているのも,あながち商業主義とも言えないです。今でもこのアルバムは廃盤にならず手に入るんですから。
| gingerpop | folk music | 17:15 | comments(2) | trackbacks(1) |
フィンランドのサンプラー(2)
Finnish Folk SongFolk Voices / Finnish Folk Song Through The Ages Ondine ODE-934-2(1999)
 同じくフィンランドを代表するクラシックの国際レーベル(新興勢力だけどね)とは言え,前回の Finlandia(Warner) と比べると,こちらの Ondine は10ページの解説と16ページもの英訳付き歌詞を載せたブックレットが志しの高さの違いを表しています。
 それもそのはず,サンプラーと思って買ってみたら歴とした新作の企画盤。社長のレイヨ・キールネン(Reijo Kiilunen)氏がシベリウス・アカデミーの音楽オタクである関係からか,アカデミーのフォーク科出身の実力所が集められてのタイトル通りの年輪を刻んだ歌が19曲。

 楽器は最小限(しかしユニーク),歌と声を前面に立てた作り。クラシックとフォークの境界の曖昧さを窺がわせる様々な表現を聞いていると,他の国の音楽事情とは少し違っているんだろうなと思います。地声なんだけれど情熱に任せない,感情に走らない端正で訓練の行き届いた声は,抑制と言うのでもないなあ。きちんと歌詞と情感の調和が取れていて心地良く響きます。
 国家の独立の為に民族音楽が重要な役目を果たしたフィンランドの事。これが今現在の民族の声だと言っても間違っていないかも。

 タッラリ(Tallari)らのグループが大衆的な匂いを醸す歌を披露すれば,古代の呪術だか狩猟民族の血だかを蘇らすような発声と前衛的なボイス・パーフォーマンスがまるで同じもののように聞こえたり。カレワラの詩を女性合唱団が中央ヨーロッパ的な唱法で歌ってみたり。どのような表現であろうと,それがそのまま町の通りに存在するような。そんな気がします。
 ノルウェイやスウェーデンとよく似た牛飼いの声があったり。あまり踊りぽくないが“〜のポルスカ(polska)”というタイトルが3曲もあるのはスウェーデン支配が長かったせいか。ロシアの影響が少ないのは民族運動が高まったのとロシア帝政の崩壊が重なったせいもあるのか。その辺の所はよく分からない。

 バラッドだろうか子守歌だろうか。炉辺で歌ってもらっているようなリズムのない女声のソロが続く後半は,白夜の長い夜,雪に閉ざされた森の小屋を思わずにいられません。しばらく胎内回帰しま〜す。
| gingerpop | folk music | 23:31 | comments(4) | trackbacks(2) |
フィンランドのサンプラー(1)
 昔からレーベルのサンプラーを見つけると,つい値段に目をやり,安ければ取り敢えず買っておこうと手に持ってしまいます。デパ地下やスーパーの食品売り場の試食マニアや薬の試供品好きなんかと変わらない性癖ですかな。
 普通はレーベルを代表するミュージシャンや力を入れて売り出そうとしている曲なんかが入っています。時には,設立ン周年かなんかでレーベルの歴史や主張なんかが書いてあったり,珍しい写真が載っていたりするモノにぶつかるとウレシイす。でもそうじゃなかったりするとうんと損した気分になります。(;^_^)ゞ

FinlandiaFinlandia Sound Souvenir 20
 クラシックで有名なこのフィンランドの代表レーベル・フィンランディア。ワーナー系列なもんで,世界市場に向けた商売をし始めた1990年代の総まとめとして出したものかも。でもそれにしちゃあブックレットが1枚の紙を折っただけ…裏表紙には何も書いてなくて,内側の2ページに収録曲は21曲のタイトル・ミュージシャン・作者・年・番号が書いてあるだけ…のそっけないもの。一応タイトルの英訳だけは書いてあるけれども。

 まあ,それによると1970年〜1998年の録音がある程度満遍なく集めてある。いかにも抒情なワルツとかクラシック好きの国らしい上品な小品とかが初期の人達。カウスティネン・ポプリ・プレイヤーズ(Kaustisen Purpuripelimannit)という可愛らしい名前のグループ。カウスティネン(Kaustinen)はヘルシンキからかなり北へ行った何もない町だそうですが,「何もない」とは普通の人にとってであって,北欧の伝統音楽が好きな者にとっては「ここにすべてがある」町です。ただし7月だけではありますが。
 国立の民族音楽研究所があるこの町は伝統を色濃く残した土地で,1960〜70年代のフォーク・リバイバルで人気を博したコンスタ・ユルハ(Konsta Jylha)が生まれ活躍した町で多くの演奏家・歌手を輩出しています。
 7月に毎年催されるカウスティネン・フォーク・フェスティバルは,今では世界中からルーツ・ミュージックの演奏家が招かれるほど大規模な祭になりました。

 70年代の曲にはオーソドックスなヨイクやマルッティ・ポケラ(Martti Pokela)氏らによるカンテレ(Kantele)トリオの演奏が収録。ポケラ氏はカンテレの第一人者で音楽教授。前衛的な作品を一度聞いたことがありますが,ここでは(ホテル・カリフォルニアのイントロ似の)伝統曲がいくつか聞けます。

 80年代は不思議な事に,まだ女子高生合唱団だったヴァルティナ(Varttina)が1曲だけ。アレンジもよく施さず少女達ががなりたててるだけ(あ,ほめてるんで…一応)のデビュー盤と同じ年の録音だけれど,格段の進歩の見える曲。ああ,セカンドに入ってるのかも。持ってないんで確認しようがない。サックスやフィドルがかっこいい“Sorja Poika”という歌。意味は“Pretty Boy”だって。
 他は1990年代中盤以降にヴァルティナ旋風の影響を受けて出現したグループが中心で。アンゲリン・ティトット(Girls Of Angeli)やシルマッカ(Sirmakka)は日本でも大きな宣伝してましたね。丁度来日したばかりのヤァラホーン(Gjallarhorn)の1作目からも。あれ,日本発売は女性優遇じゃん。男性版シルマッカなミリャリット(Myllarit)は出ませんでしたよ。この後彼らは,カレリアン・フォーク・パンク(笑)みたいにして伸びていくんですが,でもやっぱり日本じゃ受けないよなあ。

Finlandia 3984-24652-2(1999)
| gingerpop | folk music | 21:20 | comments(0) | trackbacks(0) |
シューラルー
Siúil A Rúin (traditional song of Ireland)

[refrain]
siúil, siúil, siúil a rúin
siúil go socair agus siúil go ciúin
siúil go doras agus éalaigh liom

はるか 遠い丘に おれたなら
立てなくなるほど 泣けましょう
涙で水車も まわりましょう
Is go dteígh tú a mhuirnín slán

わたしの大事な 糸車
鉄の剣に 換えましょう
大事なあなたに 捧げましょう
Is go dteígh tú a mhuirnín slán

魔除けに ペティコート 紅く染め
物乞いしながら 旅しましょう
娘は死んだと 言われましょう
Is go dteígh tú a mhuirnín slán

今ごろ あの人 フランスで
戦さに明け暮れ してるでしょう
二度とは 帰ってこないでしょう
Is go dteígh tú a mhuirnín slán

 何年かぶりに歌ったら,一部で受けたので,記念に。(;^_^)ゞ
 アルファベットの部分はアイルランド語です。題名は“歩み来れ 思い人よ”。各連の4行目は♪健やかなれ 愛しき人… という意味です。拙訳でお目汚し申し訳ありませんが。

 メロディを聞いて PPM(ピーター・ポール&マリー)の“Gone The Rainbow〜虹とともに消えた恋”を思い出したらオールディーズ・ファンの人。♪しゅーらーらくしゃくしゅらばばくー…かむびぶいんざーぶーしゃいろーりー…と歌えたら,「あの」時代を生きた世代の方でありますな。(笑)
 その原曲に当たるアイルランドの民謡であります。アメリカでも各地で採集されていて,“Shule Aroon”と表記されてることも多いですが,資料を辿るとアイルランド語が耳から耳へ,口から口へ伝わっていく間に意味のない呪文のような言葉として定着したことを窺い知ることができます。伝承歌や昔話の比較好きには堪りません。

 PPMの歌で♪Johnny's gone for a soldier...と言う部分があるんですが,映画「ジョニーは戦場へ行った」は原題が「Johnny Got His Gun」。邦題をつける担当者がジョニーの名前と反戦つながりで借用したのかもしれませんね。
 ジョニーと言えば“Johnny I Hardly Knew, Ye”。南北戦争当時に作られた“When Johnny Comes Marching Home”など,戦場に赴く悲劇の兵士のイメージで使われることが多いようで,映画や演劇などでも象徴的によく使われています。
 後者の旋律は映画「博士の異常な愛情〜Dr.Strangelove...」「ダイハード3」で印象的な使われ方をして,耳に残っている人も多いかも。前者はやはりアイルランドの民謡で,歌詞の内容が「ジョニーは戦場へ行った」の原案になっていまして,この付近はすべて関係が深く,しっかりと面白くまとめて本館の方に展示したいなあと(一応)思っています。
| gingerpop | folk music | 00:59 | comments(5) | trackbacks(2) |
新音楽紀行ラトビアン・スタイル?
ふと手に入った「新音楽紀行ラトビアン・スタイル」が,とても素晴らしかったので発売元のクラウンのサイトを見に行った。と言うと嘘になる。ブックレットや解説があまりにもひどかったので詳しく知りたくなって見に行ったのだ。そこで無残に打ち砕かれた我が好奇心を,今日は告白したい。見て下さい。このやる気のない広告ページを。

2002年の夏に6枚が発売されていたのだ。気がつかなかった。日本・ラトビア・フランス・ギリシャ・スペイン・キューバ。どういう基準で選ばれたのだろう。帯にある謳い文句が全体としてのリリース・コンセプト。「大人のためのワールド・ミュージック」。何を持って「大人のため」と言うのだろう。「子供のためのワールド・ミュージック」があるのだろうか。

などと考えてはいけないようだ。クラウンの担当者は,おそらく,何も考えていない。6枚とも白を背景に数本の花が写っているだけのジャケットは,現地の風景や人物を使って統一性が失われるのを嫌がったのだろうか。少しハイカラな雰囲気も漂わせたかったのかもしれない。かつてのキング・レコードのヨーロピアン・トラッド・コレクション第1弾を思い出させるが,あちらはちゃんとオリジナルのジャケットを別紙で付けていたし,解説も当時の専門のファンやライターに依頼されていた。

大人は現地のミュージシャンの顔や楽器やアルバムの数や歌の内容やタイトルの意味や録音データや風土や音楽状況や○○や△△等々…には興味がない。担当者がそう考えているのだとすれば合点が行く。いや,何も考えていなかったっけ。興味がないのだろう。本当ならよくこんな企画が通ったものだと誉めたい所だ。しかし出来あがったものがこれではね。2年になるのにシリーズも続いていない。

世界にはたくさんの国があり、様々な文化が生きています。このシリーズはワールド・ミュージックの堅苦しい枠を越えその国に生きる人たちの優しい表情や温もりの感じられる音楽を紹介します。知らない音楽に触れるのも「新しい旅」の始まりかもしれません。

ちょっと自信なげではあるが,たいそう立派な企画意図だ。でも,提案をするのなら案だけで終わらせてはイカンだろう。紹介をするのなら次の方向付けが出来るようにしとかねば無責任なのじゃないか。買ったラトビア1枚だけで判断してはイカンのかもしれないが,曲(どれも素晴らしい14曲。選曲はホメる)を聞くだけで「新しい旅」の始まりは訪れっこないと思うよ。その為には,やっぱり売れるものを作ること。買った人が買って良かったと思えるものを作ること。企画の意図が商品に反映されていること。

このアルバムは何人か勧めたい人が思い浮かぶんだけど,ブックレットが何の役にも立たないので躊躇してる。「音楽に説明は要らない」と言うけれど,そうじゃない場合だってある。
| gingerpop | folk music | 01:25 | comments(0) | trackbacks(1) |
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