古今東西音楽館増築部

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アボンリーへの道
 訳あって,十数年ぶりにカナダのTVドラマ「アボンリーへの道」を見直している所。最初に見た時には気付かなかった音楽やダンスの使われ方が,くっきりと見えるようになっていました。例えば子供たちの歌う童謡。男が突然弾き出すフィドル。ホテルや広場で踊られるダンス。
 お,アイルランドのフィドル・チューンを弾いてるじゃん。今のダンスはアイリッシュ・ダンスぽいぞ。さっきの子守歌ってウェールズの出自だったっけ・・・。などとね。

 舞台は今世紀初頭,カナダ東岸のプリンス・エドワード島。「赤毛のアン」の姉妹編なので登場人物も重なってる。田舎も田舎。電話も自動車も,穏やかで平和な生活と便利だけれど慌しい生活の葛藤としてドラマのテーマになるほどの。
 タータン・チェックのスカートが出て来るのを見て,みんなスコットランドからの移民だと思ってたら,どうもスコティッシュ・アイリッシュの可能性が高いんですね。英国教会と相容れず北アイルランドへ移民していたプロテスタントで,さらにアメリカ大陸へ移民した人達をそう呼ぶのですが,敬虔なアボンリーの人達の多くが長老派。長老派は16世紀にスコットランドの国教になってるんで。
 やはり西洋人の生活の根底には宗教的な部分があるんで,その辺を理解して見るとドラマの深い部分がより楽しめますな。エラそうなことが言えるのもこの十年で少しは勉強したってことですね。(笑)
| gingerpop | TV, movies | 12:18 | comments(0) | trackbacks(1) |
シューラルー
Siúil A Rúin (traditional song of Ireland)

[refrain]
siúil, siúil, siúil a rúin
siúil go socair agus siúil go ciúin
siúil go doras agus éalaigh liom

はるか 遠い丘に おれたなら
立てなくなるほど 泣けましょう
涙で水車も まわりましょう
Is go dteígh tú a mhuirnín slán

わたしの大事な 糸車
鉄の剣に 換えましょう
大事なあなたに 捧げましょう
Is go dteígh tú a mhuirnín slán

魔除けに ペティコート 紅く染め
物乞いしながら 旅しましょう
娘は死んだと 言われましょう
Is go dteígh tú a mhuirnín slán

今ごろ あの人 フランスで
戦さに明け暮れ してるでしょう
二度とは 帰ってこないでしょう
Is go dteígh tú a mhuirnín slán

 何年かぶりに歌ったら,一部で受けたので,記念に。(;^_^)ゞ
 アルファベットの部分はアイルランド語です。題名は“歩み来れ 思い人よ”。各連の4行目は♪健やかなれ 愛しき人… という意味です。拙訳でお目汚し申し訳ありませんが。

 メロディを聞いて PPM(ピーター・ポール&マリー)の“Gone The Rainbow〜虹とともに消えた恋”を思い出したらオールディーズ・ファンの人。♪しゅーらーらくしゃくしゅらばばくー…かむびぶいんざーぶーしゃいろーりー…と歌えたら,「あの」時代を生きた世代の方でありますな。(笑)
 その原曲に当たるアイルランドの民謡であります。アメリカでも各地で採集されていて,“Shule Aroon”と表記されてることも多いですが,資料を辿るとアイルランド語が耳から耳へ,口から口へ伝わっていく間に意味のない呪文のような言葉として定着したことを窺い知ることができます。伝承歌や昔話の比較好きには堪りません。

 PPMの歌で♪Johnny's gone for a soldier...と言う部分があるんですが,映画「ジョニーは戦場へ行った」は原題が「Johnny Got His Gun」。邦題をつける担当者がジョニーの名前と反戦つながりで借用したのかもしれませんね。
 ジョニーと言えば“Johnny I Hardly Knew, Ye”。南北戦争当時に作られた“When Johnny Comes Marching Home”など,戦場に赴く悲劇の兵士のイメージで使われることが多いようで,映画や演劇などでも象徴的によく使われています。
 後者の旋律は映画「博士の異常な愛情〜Dr.Strangelove...」「ダイハード3」で印象的な使われ方をして,耳に残っている人も多いかも。前者はやはりアイルランドの民謡で,歌詞の内容が「ジョニーは戦場へ行った」の原案になっていまして,この付近はすべて関係が深く,しっかりと面白くまとめて本館の方に展示したいなあと(一応)思っています。
| gingerpop | folk music | 00:59 | comments(5) | trackbacks(2) |
ワイド節(2)〜ハシケン
感謝 小さな画像で見ればお坊ちゃまの風貌ですが,一筋縄では行かない歌い手であります。下の画像と見比べたらわかるってもんですね。1998年のセカンド・ソロ「感謝」に入っている生ギター・バージョン。イントロのジョン・リー・フッカー(註:ブルースに詳しくないので適当な人名を入れました。分かってる人は正しく読み替えてください。)ばりのパワフルで泥臭いブルース・フィーリングで歌う“ワイド節”。

 民俗音楽にしろトラッドと呼ばれる音楽にしろ,異質な風土で生まれた歌をここまで自家薬籠中の物にした例は世界でも片手に余ると言い切ってしまいましょう。
 奄美の民謡界にどんな衝撃を走らせたのか,その後のハシケンの人気+“ワイド節”のさらなる人気を見るとよく分かります。

ハシケン・プレゼンツ ハシケン・プレゼンツ“ワイド”ミディ・クリエイティブ CXCA-1099(2002)
 こちらはホーン・セクションを交えたファンキーなバンド・バージョン。最上級の気持ち良さ。おまけに“稲スリ節”もスカだしね。普通の店でも買えまっせ。パッケージは一回り大きい厚紙ジャケ・英語表記の「輸出仕様」で目立つよ。
| gingerpop | compound | 16:41 | comments(0) | trackbacks(0) |
ワイド節(1)
 物悲しい歌の多い奄美民謡の中で“六調”とならんでお祭りの唄の代表である“ワイド節”。徳之島の闘牛…と言ってもスペインの人vs牛でなくて,闘鶏や闘犬みたいに牛同士を戦わす…をテーマにした威勢の良い曲です。
 昭和53年,作詞:中村民郎・作曲:坪山豊の手により誕生。築地俊造氏によって歌われ徳之島で大フィーバー(死語?)を巻き起こし新民謡として根付き今に至る。最初に録音された築地さんはよりディープな感じがします。「カサン節」と呼ばれる北部の歌い方だそうです。
 作者の坪山さんは3〜4度の録音を行っていて,お囃子だけの素朴なもの,指笛・太鼓を加えた賑やかなもの,そして館主最大の興味を持つ『レイト・シクスティーズ・ブルースロック・バージョン』があります。

ワイド節 日本のロックの黎明期に興味のある人すべてに聞いてもらいたい1曲です。
 低く大地を踏みしめるドラムとベース,トゥ〜ンと伸びたギターは奄美生まれのクリーム(Cream: Eric Crapton, Jack Bruce, Ginger Bakerのトリオ)。何年の録音なのか分かりませんが,あの頃の匂いが強烈に漂って来ます。本土に紹介されていれば,日本のロックが進む別の道が敷かれていたかもしれません。或いは無視されて終わった可能性もあります。だからこそ,今「ニューロックの夜明け」等のシリーズに入れて多くの耳に届かせて欲しいと思うのですが,原盤を持っている会社なり人なりから関係者にプッシュしても良いのじゃないでしょうか?

 “ワイド節”の誕生にはとても興味深い裏話があるのですが,聞いた知識を披露するのは止しておきます。奄美の民謡に興味のある人は専門のサイトで知ることが出来るでしょう。
| gingerpop | compound | 20:33 | comments(0) | trackbacks(0) |
ドミニク(Dominique)(3)
 ペギー葉山版“ドミニク”を入手しました。
 当時の歌としては長い,5分近くもあるペギー版は<日本語詞:あらかはひろし>となっていました。日本語詞?…ふうーむ。。リピートの部分は,♪「ドミニク ニクニク そまつななりで 旅から旅へ どこに行っても 語るのはただ 神の教えよ〜」です。「心やさし 強い人」はありませんでした。ピーナッツ版は内容が女の子が主人公だし,リピート部はなかったし。実際の所「みんなのうた」版はどんな歌詞だったんでしょうか。こうなったらナンとしてでも手に入れてやるっ。あ,「ナン」はオリジナルの「シンギング・ナン」のみんなにちなんでみました。失礼しました。(;^_^)ゞ

 みんなのうた版“ドミニク”(1964/04):東京放送児童合唱団 作詞・島恵郎
 そうか。こちらも「作詞」かあ。(謎爆)

 オリジナルのフランス語の歌詞は見つけてるんで,単語をいくつか引けばすぐ解決するでしょう。予想はついてるんで,英語訳のあるサイトに行き当たればダメ押しできて解決の予定。また近々このネタで書けると思います。

 今回のCDは「青春POPS'50〜'60 テネシー・ワルツ」キング: KICS-80001(1998)です。ペギー葉山が8曲も入っているので,前から探していたものです。他はほとんどが持っている曲とダブるんですが,江利チエミの「テネシー・ワルツ」「カモナ・マイ・ハウス」など,テイク違いが入っていたのでラッキーです。でも,収録されてる音の年代にバラつきがありそうだし,そんな録音・発売データも歌手との関り・裏話などもない解説が物足りないコンピレではあります。西洋音楽の受け入れ事情に興味のある身としては,,あまり役に立つものではありませんでした。
| gingerpop | oldies | 15:37 | comments(0) | trackbacks(0) |
ブルガリア,トゥバ,ロシアの三種混合
Mountain TaleMountain Tale(1998)
Angelite & Moscow Art Trio with Huun-Huur-Tu
JARO/Zebra Acoustic ZA-44405-2(1999)

「Compound=化合物,合成」のカテゴリーを加えます。錬金術ぽいので「Amalgam=水銀と他の金属との合金」にしようかとも思いましたが,こちらは対立的要素の混交の印象があって没にしました。間違った使い方かもしれませんが,まあいいやって。(;^_^)ゞ

 ブルガリアとロシア,そしてトゥバ。それぞれが確固たる強い個性を持った歌声と音楽の伝統を持った国です。その3国を代表する民俗音楽家を一つの容器に入れてシェイクしたらどうなるか。「トゥバ人の父とブルガリア人の母を持つロシア人の娘とユダヤ人の息子…」これは1996年に出た同じメンバーによる1作目の解説です。未聴なので本作とどう違うのか分かりませんが,世間の地声合唱好きを狂喜(驚愕)させたカクテルが生まれたのは疑いないでしょう。

angelite,Huun-Huur-Tu Angelite はおよそ20人のブルガリアの女声合唱団。The Bulgarian Voices [Angelite] なる名称が本名らしい。Moscow Art Trio は,ロシアの伝統音楽の実践的研究家 Sergey Starostin,民族的ジャズ・ピアニスト Mikhail Alperin を擁する男性トリオ。そして Huun-Huur-Tu はトゥバ共和国を代表する音楽グループ。アメリカや日本でも人気があり国際親善大使的な役割も担っているようで。ロシア勢の位置がちょっと分かりにくいけど,バラライカを弾いたりロシア民謡を歌ったりする人達ではありません。
 今回改めて聞いてみての一番の感想は,しっかりとコントロールされた音楽なんだなあということでした。

 その昔,ラジオからクラフトワーク(KRAFTWERK,クラフトヴェルク)と西アフリカの子供の歌が同時に流れて来たのを耳にした時,その発想と選曲の妙に感動し,すっかり脱帽したことがあります。あまり面白かったので,それからしばらく似たような真似を何度かやってみましたが,あれほどの絶妙なハマリ方はなかなか出来るものではありませんでした。調整室で微妙なスピード調節をしていたのかもしれません。
 このCDでも「偶然の産物」と言いながら,ルーツの異なる曲をテンポだけ合わせて歌う試みにも挑戦しています。ロシアのメロディを不協和音の女声が合唱し,ロシア人の大地を朗々と渡る男声が,野趣な響きが俄然突出するホーメイとぶつかり合う。…いったいどんな世界の音楽でしょう。面白い面白いと言っている間に時間の感覚が麻痺して最後まで聞き通してしまってます。
| gingerpop | compound | 23:01 | comments(2) | trackbacks(16) |
新音楽紀行ラトビアン・スタイル?
ふと手に入った「新音楽紀行ラトビアン・スタイル」が,とても素晴らしかったので発売元のクラウンのサイトを見に行った。と言うと嘘になる。ブックレットや解説があまりにもひどかったので詳しく知りたくなって見に行ったのだ。そこで無残に打ち砕かれた我が好奇心を,今日は告白したい。見て下さい。このやる気のない広告ページを。

2002年の夏に6枚が発売されていたのだ。気がつかなかった。日本・ラトビア・フランス・ギリシャ・スペイン・キューバ。どういう基準で選ばれたのだろう。帯にある謳い文句が全体としてのリリース・コンセプト。「大人のためのワールド・ミュージック」。何を持って「大人のため」と言うのだろう。「子供のためのワールド・ミュージック」があるのだろうか。

などと考えてはいけないようだ。クラウンの担当者は,おそらく,何も考えていない。6枚とも白を背景に数本の花が写っているだけのジャケットは,現地の風景や人物を使って統一性が失われるのを嫌がったのだろうか。少しハイカラな雰囲気も漂わせたかったのかもしれない。かつてのキング・レコードのヨーロピアン・トラッド・コレクション第1弾を思い出させるが,あちらはちゃんとオリジナルのジャケットを別紙で付けていたし,解説も当時の専門のファンやライターに依頼されていた。

大人は現地のミュージシャンの顔や楽器やアルバムの数や歌の内容やタイトルの意味や録音データや風土や音楽状況や○○や△△等々…には興味がない。担当者がそう考えているのだとすれば合点が行く。いや,何も考えていなかったっけ。興味がないのだろう。本当ならよくこんな企画が通ったものだと誉めたい所だ。しかし出来あがったものがこれではね。2年になるのにシリーズも続いていない。

世界にはたくさんの国があり、様々な文化が生きています。このシリーズはワールド・ミュージックの堅苦しい枠を越えその国に生きる人たちの優しい表情や温もりの感じられる音楽を紹介します。知らない音楽に触れるのも「新しい旅」の始まりかもしれません。

ちょっと自信なげではあるが,たいそう立派な企画意図だ。でも,提案をするのなら案だけで終わらせてはイカンだろう。紹介をするのなら次の方向付けが出来るようにしとかねば無責任なのじゃないか。買ったラトビア1枚だけで判断してはイカンのかもしれないが,曲(どれも素晴らしい14曲。選曲はホメる)を聞くだけで「新しい旅」の始まりは訪れっこないと思うよ。その為には,やっぱり売れるものを作ること。買った人が買って良かったと思えるものを作ること。企画の意図が商品に反映されていること。

このアルバムは何人か勧めたい人が思い浮かぶんだけど,ブックレットが何の役にも立たないので躊躇してる。「音楽に説明は要らない」と言うけれど,そうじゃない場合だってある。
| gingerpop | folk music | 01:25 | comments(0) | trackbacks(1) |
異国情調(1)
昔っから旬の流行り物や人気の高いものに興味が湧かない性分で,自分が好きだったものにも人が群がり始めると気持ちがすぅ〜っと退いて行ったものです。でも,時間が経ってから戻ってみて,後に残った残りものを拾うのは良いもんです。あんなに嫌いで頭っから馬鹿にしてた古い歌謡曲やオールディーズ,スタンダードを聞くようになったのも,そんな性格から必然の成り行きだったんでしょう。しょうがねえなー。(⌒‐⌒;)

「異国情緒」って「いこくじょうしょ」って読むんですねぇ。「じょうちょ」だとばかり思ってた。…実は今ブックシェルフで確認した所,「異国情調」が「じょうちょう」なので,そう思い込んでいた訳ですな。だが,耳で聞く分には左程の事はあるまいて。(笑)

 閑話休題。音楽のスパイスの一つに異国情調ってのがありますね。好きな歌を色々思い出してみると,どうもこいつがキーワードになってるみたいです。近頃のヒット曲ではあまり味わえることの少なくなったスパイスです。
 歌が作った人が歌うのが当り前になったり,楽器編成がロックのコンボ中心になったり,リズムが縦ノリのダンスビート一本槍になったりしてるのも大いに関係してそうです。
| gingerpop | small talk | 22:40 | comments(0) | trackbacks(0) |
ハイCsの殺戮〜Florence Foster Jenkins
ハイCsの殺戮 先にSPを4枚残した…と書きましたが,RCA盤に収録の曲目を書いておくと,下のようになります。録音データは不詳です。

 1.夜の女王のアリア Queen Of The Night Aria / Mozart
 2.音楽玉手箱 The Musical Snuff-Box / Liadoff
 3.鳥のように Like a Bird / McMoon
 4.鐘の歌 Bell Song / Delibes
 5.セレナータ・メキシカーノ Serenata Mexicano / McMoon
 6.かわいい鳥 Charmant Oiseau / David
 7.ビアッシー Biassy / Bach-Pavlovich
 8.アデーレの笑いのアリア Adele's Laughing Song / Strauss,Jr.

 そして,このほど新たにもう1曲見つかったもの(9.Valse Caressante / McMoon)を含めて全9曲,音楽ファンの味方 NAXOS から新譜が出ていたので紹介しておきます。
 日本盤の題名が凄いことになっています。「ハイCsの殺戮」。なんでしょね,ハイC。今もあるんでしょうか。武田薬品から出ていたビタミンCのタブレット。んな訳ない。オクターブ上のCってことでしょうか。バイオリンなら「G線上の…」。フローレンスさん,強烈なソプラノです。「C調の…」では間が抜ける。ま,そんな訳で,アメリカの大屋政○おばさんの残した音源はすべて聴けることになりました。目出度し目出度し。

Florence Foster Jenkins / Murder on the High Cs
NAXOS 8.120711(2003)
| gingerpop | vintage | 00:10 | comments(2) | trackbacks(0) |
人間の声の栄光〜Florence Foster Jenkins
人間の声の栄光???? 本タイトルには実は「?」が4つ付いている。正式には「人間の声の栄光????」なんである。英語題は「The Glory(????) of the Human Voice」である。『RCA100周年特別企画』でリマスターでリリースされたこの1枚。フローレンス・フォスター・ジェンキンズとは一体何者であろうか????
▲前のブログで一度書いた物です。そこでは「続きを読む」のボタンをクリックしないと以下の文が表示されない仕組みだったので,こんな前振りをしています。(;^_^)ゞ 語尾も「だ調」になってますが,気にせずお読みください。2種類のCDを挙げたので,その時のコメントも付けて2回に分けて語ります。▼

 いつも後で何とかしようと思って書くメモだが,後で何とかなったタメシはほとんどない。そんな幾層にも重なって朽ち果てつつあるメモ用紙(単なる紙切れの事が多い)の地層の中で,何年も眠っていた彼女の名を見つけたのはほんの偶然だった。シワシワになった小さな紙切れを目にして,みるみる記憶が蘇る。もうかなり昔,深夜放送でそんな女性がいる事を耳にして咄嗟に書いたものだ。そこには名前以外に「史上最大のオンチ,大金持ち,カーネギーホールで公演」という鉛筆書きの文字が読み取れたのだった。
 その時は実際の歌が聴けなかった為に,その後何年も意識下で好奇心が疼くまま忘れていたのだ。ごめんよ,こんなに待たせて。ワシの好奇心。…それからの重なる偶然に導かれて本CDを手にした時は,まさにそんな心境だった。

 長々と個人的なことを書いているが,この人を,この歌を,この音楽をどう説明して良いやら・・・分からないのである。これほど「百読は一聴にしかず」と思わせるものは他に無い。…調べれば分かることをちょこっと書いてごまかしておくかな。

 富豪の娘として生まれ,富豪と結婚。離婚して莫大な慰謝料をせしめ,40歳にして念願のオペラ歌手としてのプロ活動を開始たフローレンスは,一躍人気者となったのです。
 彼女のリサイタルは常に笑い声から始まって,熱狂的な歓声と拍手で終わったと言います。彼女の「唱法無視,音程無視,リズム無視,テンポ無視」そして姿形,衣装,すべてが笑いを誘ったのです。しかし「人に生きる希望を与える」ほど「自信たっぷり」に繰り広げられるパフォーマンスを体験し,ついに観客は賞賛の嵐を送るようになるのでした。「楽譜というものの束縛から己をこれほど徹底的に解放した人間は皆無」と賛辞を与える評者までいるのです。
 しかし,1944年,カーネギー・ホールでの公演を成功させた1ヶ月後,心臓発作で急逝してしまうという悲劇に見舞われてしまったのです。我々に(おそらく1930年代に発売された)4枚のSPを残して…。

 この作品集…オペラについては無知なので解説を鵜呑みにすると,オペラ・アリアきっての難曲と言われる“夜の女王のアリア”以下8曲の歌曲を収録したLP…は,後世に受け継がれるべき歴史的遺産“RCAレッド・シール”のひとつなのだそうだ。こんなもんでいいか。(;^_^)ゞ

Florence Foster Jenkins 〜 人間の声の栄光????
BMGファンハウス BVCF-37029(2001)
| gingerpop | vintage | 16:05 | comments(3) | trackbacks(0) |
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